医療法務

医師の残業時間を減らすには?

拘束時間については、宿日直基準の確立

所定外労働時間(残業)は、自己申告制による残業時間とタイムカード、ICカード、PC使用時間等との乖離時間がある、自己研鑽の労働時間を明確化すること

 

行政では、タイムカードの打刻時間において、使用者が院内に労働者がおり労働していない旨反証しない限り、労働者から請求された場合はタイムカードの打刻の結果として把握される時刻を前提に労働時間として取り扱う(東京高裁平成10年9月16日【三晃印刷事件】)

研修医などの場合は、電子カルテのログインと自動ログアウト時間から労働時間を図る病院もありますが合理的とはいえません。

タイムカード打刻時間と時間外自己申告の時間に大きな乖離が生じています。

さて、私も事務員が、学書を読んでいるのを労働時間として申告されて認めるべきか判断したことがあります。

日本医師会では、明らかな労働と純粋な自己研鑽を明確化するように分けています。

通達では、「研鑽の類型」が示されています。

1、一般診療における新たな知識、技能の習得のための学習

2、博士学位を取得するための論文、専門医取得のための症例研究、論文作成(学会など)

3、手技を向上させるための手術の見学

では、労働弁護士としては、どのように考えるべきでしょうか。

まずは、簡単には割り切れないということです。診療から途中、研鑽に切り替わるということもあります。また、自己研鑽について労務下にあったかの判断が難しくモザイク的。

病院、上司から指示・命令されたか否かの一点で研鑽か否かを判断するのを労働弁護士は相当であると考える。

診療科の科長は会社でいえば「社長」のようなもの。「科長」から指示があったかどうか。

1、研鑽の定義を明確化

2、研鑽をして残業時間にいても労働ではないことの書面での明確化

3、研鑽を診療体制に含めない取り扱いの明確化

4、周知

5、問題の医師への周知

労働時間ではなく、院内時間の管理が非常に重要。院内にいられると反証を挙げない限り労働時間にされかねない。

労働時間に該当しないのは、業務上必須ではない行為を自由意思により、所定労働時間外に、自ら申し出て、上司の指示なく行う時間は労働時間ではない(通達)

なお、診療の準備又は診療に伴う後処理として不可欠なものは、労働時間に該当する。(通達)

研修医はヘビーローテ。病院の近くに住んでいるケースが多い。手術のための準備をする。上席の医師が自動車で来る。研修医の準備時間が労働時間が、労働時間に該当しないということはできない。オペ時間だけが労働時間ではない。

さて、論文のお手伝いいたしません、という女医さんもいますが、論文については、研鑽の不実施について就業規則上の制裁があるなど、余儀なくされる場合や研鑽が業務上必須でなくとも上司の指示があり行わせる場合は労働時間であるとされます。

また手技を向上させるための手術の見学は労働時間ではありませんが、見学中に診療を行った場合は当該診療時間は労働時間に該当するものの、見学者が診療に参加することが常態化している場合は見学時間はすべて労働時間として取り扱われます。ただし、院内にいる以上、病院側には安全配慮義務があるのであって、労働時間でない手空き時間だから問題ないということでは安全配慮義務に違反しかねない。

         業務    拘束力

労働時間である 業務上必須 上司の命令、就業上の制裁

労働時間でない 必須でない 自由な意思、奨励

なお、自己研鑽については、原則として、現在の業務上必須であるか、対象医師ごとに個別に判断するものとされている。そして、純粋な自己研鑽の医師は、研鑽計画を事前に提出し上司の承認を得るものとする。また、手続は、いったん事務職を経由するということも考えられる。

しかし、黙示の指示とならないためにはどうするのか

・自己研鑽についても上司への申出制度とすること

・上司が業務に該当しないことを確認する

・病院の管理下にないことを確認

・研鑽指示がなく、研鑽開始において準備業務ではなく、元来業務から離れて良いということを確認するということになります。

・研鑽の労働時間制のまとめとして弁護士からみると、業務上必須のものと定義が問題になりやすいと思います。診療の準備又は診療に伴う後処理として不可欠なものですが、個々の能力に応じて準備の範疇が異なりやすくなるのではないか。平均的な医師の準備の定義付けをしてトラブルを防止することも考えられます。