離婚相談

女性の人権・DV・モラハラ・セクハラ・性暴力被害女性のため戦うヒラソル

女性に対するDV・モラハラ相談(女性人権相談)の概要

 1 女性に対するDV相談とは?
 (1)電話相談及び面接相談の実施
    女性に対する暴力集中相談は、ヒラソルの法律相談窓口です。

    女性に対する暴力専門相談は、面接相談で行われます。

    無料の電話相談を実施するのは、精神的に深く傷ついていると同時に経済的にも恵まれていないことも多いDV、セクシュアルハラスメント、性暴力等の被害女性のために、精神的にも経済的にも負担の少ない相談窓口を提供する趣旨です。

 (2)事件の受任について
    特に、DVの被害者については、夫に見つからないよう居所を隠して生活している者も多く、働くことが難しい場合もある。このような場合には、法律扶助(法テラス)の利用を検討する必要がある。

 2 女性に対する暴力集中相談で大事なこと
 (1)二次被害を発生させません

    女性に対する暴力相談の担当者は、被害女性に対し二次被害を与えないよう言動に注意しなければならないのです。女性に対する暴力被害者は、暴力により精神的に深く傷ついており、何気ない弁護士の一言や態度により更に深く傷ついてしまうことがあります。

 したがって、相談を担当する弁護士は、被害女性の心情に十分配慮し、自分の言動が被害女性を傷つけていないか常に念頭に置きながら相談に望みます。

 (2)弁護士による支援の役割とその限界
    女性に対する暴力被害者に対する支援は、精神的な支援、医療面における支援、経済的支援、住居等の生活支援及び法律面における支援等多岐に渡っている。法律知識と法律実務に通じていることをその存在意義としている私たち弁護士が、これら多岐にわたる全ての分野について支援を提供することはそもそも不可能である。女性に対する暴力相談は、弁護士による支援の役割を認識するとともに、その限界も自覚して、必要な場合には、他の専門家と協働し、ネットワークによる支援構築を目指し、目標としては、社労士、司法書士、税理士との連携を目指します。また、相談を通じて被害女性の怒りや悲しみといった強い感情の発露にさらされることは、弁護士自身の精神を想像以上に疲労させることにも依頼者におかれては留意してください。弁護士のメンタルヘルスの維持にも十分心配りすべきです。

女性の人権

女性に対する暴力として、ドメスティック・バイオレンス(DV)、セクシュアル
・ハラスメント、レイプなどの性暴力があげられる。
 DVとは、夫や親しい男性から女性に対してふるわれる暴力をいうが、その態様は様々である。身体に向けての直接的・間接的暴力が典型的であるが、侮辱、眠らせない、土下座させる、生活費を渡さない等の経済的虐待、行動の監視など様々なものがある。精神的暴力もDVであり、身体的な「傷害」はなくても、精神的には深刻な「傷害」を受けうるものであるから、身体的暴力に比して軽視してはならない。性暴力には、強姦、強制猥褻、ちかん、ストーカー(強要・脅迫にあたる場合もある)、未成熟者との性行為等がある。性暴力は、基本的には性差別意識に基づき、女性の人格を無視して行われるところに1つの特徴がある。性暴力は、とりわけ被害者に著しい心的外傷が残ることが多い。加害者は、必ずしも見知らぬ者のみではなく、上司や友人、親族である場合も少なくない。被害者も年齢や職業を問わず広範囲であり、先入観を持たないことが必要である。また、性暴力は、一回限りではなく、継続
することも多く(加害者が職場や親族の者である場合等)、継続する性暴力においては、あたかも、夫婦や恋人同士のような関係に見えることもあるので、この点も留意しなければならない。
 セクシュアル・ハラスメントとは、「職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されること」(男女雇用機会均等法11条2項の規定に基づく厚生労働省指針)とされている。人事院規則では、他の者を不快にさせる職場における性的言動及び職員が他の職員を不快にさせる職場外における性的言動とされている。具体的態様は、強姦や強制猥褻等の犯罪行為、身体的接
触、執拗に交際を求める、言葉による性的なからかい、性的噂を振りまくなどの名誉毀損行為、猥褻な文書やポスターの配布や掲示などがあげられる。これらの行為は、個人の尊厳等を侵害する人格権侵害行為であるが、これによって、働き続けることが困難になるなど、働く権利を侵害するものである。さらに、セクシュアル・ハラスメントは、職場のみでなく、学校や大学の研究室などでも起こり、学習する権利を侵害するものともなる。
 2 弁護士の意義
   上記のとおり、ドメスティック・バイオレンス(DV)、セクシュアル・ハラスメント、レイプなど、多くの場合に女性が被害者となる事件は、本来重大な人権侵害である。暴力は、力によって相手を支配する手段であり、どのような場で起ころうとも重大な人権侵害である。女性に対する暴力の排除と被害者の救済は、男女を問わず、すべての市民が、自由で安全に生活できる社会の構築の第一歩である。それにもかかわらず、長い間被害女性の訴えが真剣に取り上げられてこなかった。
その理由は、これらの被害が「家庭内のこと」「男女のトラブル」ととらえられて、深刻な事態であると認識されていなかったことや、「被害者の落ち度」が責められること、さらには被害者の心情に理解を寄せながら丁寧に事件処理をすることが求められるために、敬遠されがちであったことなどがあげられる。そのため、従前は、被害者自身が「暴力を受けている」という認識を持てずに救済を求めようと思わなかったり、あるいは弁護士などに相談しても十分な対応がされないため「わかってもらえな
い。自分が我慢するしかない。」と、被害救済をあきらめてしまったりしていたと考えられる。
 従って、女性に対する暴力の被害者から相談を受ける場合には、女性に対する暴力の実態を知り、暴力に痛めつけられた被害者の精神的苦痛や不安な心理状態を理解することが必要である。「よくあること」という認識で相談を受けた場合、無意識のうちに、「被害者の落ち度」を責めたり、被害者を突き放すような態度を取ってしまい、被害者をいっそう傷つけるおそれがある。
 被害が顕在化しなかった従前の状況を変え、被害者が「被害」を認識するとともに、信頼して相談できるようにするためには、弁護士が必要である。

保護命令

(1)保護命令の要件
   ア 実質的要件(法第10条1項)
    ① 申立人が被害者であること
    ② 原則として婚姻関係(事実婚を含む)又は生活の本拠を共にする交際をする

関係にあること。

      但し、婚姻中又は生活の本拠を共にする交際中に身体に対する暴力又は脅迫
を受けていたケースで、離婚、婚姻取消、又は、生活の本拠を共にする交際関係の解消後も引き続き暴力を受ける暴力も「配偶者からの暴力」にあたるため、 このような場合は、離婚、婚姻取消、又は、交際関係解消後でも保護命令の申立が可能

    ③ 過去に「身体に対する暴力」又は「生命・身体に危害を加える旨告知して行 

われた脅迫」を受けたこと。

    ④ さらなる配偶者、元配偶者、生活の本拠を共にする交際相手、又は元生活の
本拠を共にする交際相手からの暴力によりその生命または身体に重大な危害
を受けるおそれが大きいこと。
   イ 形式的要件(法第12条)
     配偶者暴力相談支援センター又は警察の職員に相談等をした事実があること
        あるいは
     申立人の供述証書+公証人による認証(宣誓供述書)
 (2)命令の種類(法第10条)
    申立人の申立の内容及び要件の具備状況に応じて、下記ア、イの一方又は双方を
   発する。
   ア 6か月の接近禁止命令
    ① 被害者への接近禁止命令
    ② 子どもに対する接近禁止命令(被害者への接近禁止命令の満了まで)
      ①接近禁止命令が発令されている場合、被害者が未成年の子どもと同居して
 おり、かつ、配偶者が子どもを連れ戻すと疑うに足りる言動を行っている
こと 等から配偶者と面会することを余儀なくされることを防止する必要が
ある場合に発される。

      ただし、子どもが15歳以上のときは、子の同意が必要
    ③ 被害者の親族等への接近禁止命令(被害者への接近禁止命令の満了まで)
      ①接近禁止命令が発令されている場合、配偶者が、被害者の親族等その他被 
害者と社会生活において密接な関係を有する者の住居に押しかけて著しく粗
野又は乱暴な言動を行っていること等から、被害者がその親族等に関して配
偶者と面会することを余儀なくされることを防止するため必要がある場合に
発される。

      ただし、当該親族等の同意が必要。
④ 電話等を禁止する命令(被害者への接近禁止命令の満了まで)
      ①接近禁止命令が発令されている場合、①を発する又は発した裁判所は
、      被害者の申立により、以下の行為を禁止することができる。

《禁止できる行為》
(ⅰ)面会の要求
(ⅱ)行動の監視に関する事項を告げること
(ⅲ)著しく粗野・乱暴な言動
(ⅳ)無言電話、連続しての電話・ファクシミリ・電子メール(緊急やむを得ない場合を
除く)
(ⅴ)夜間(午後10時~午前6時)の電話・ファクシミリ・電子メール(緊急やむを得
ない場合を除く)
(ⅵ)汚物・動物の死体等の著しく不快又は嫌悪の情を催させる物の送付等
(ⅶ)名誉を害する事項を告げること等
(ⅷ)性的羞恥心を害する事項を告げること等又は性的羞恥心を害する文書・図画の送付

   イ 2か月間の退去命令(退去命令期間中の住居への接近禁止命令)
     両当事者が生活の本拠をともにしている(民法第22条)と認められる限りは、たとえ被害者が申立時に一時的にDVセンターや実家に緊急に避難している場合等も、両当事者が生活の本拠をともにしている場合に含まれ、退去命令の申立が可能である。
     なお、要件が満たされている限りは、裁判所は常に該当する保護命令を発するものとされている。裁判所の裁量で禁止期間を短縮するなどの一部認容的な命令を発することは想定されていない(例えば、3ヶ月の接近禁止命令、1か月の退去命令といったものはない。)。
 (3)管轄(法第11条) 
   ① 相手方の住所(日本に住所がないときまたは住所が不明なときは居所)の所在
地を管轄する地方裁判所
   ② 申立人の住所または居所の所在地を管轄する地方裁判所
   ③ 配偶者からの暴力が行われた地を管轄する地方裁判所
 (4)保護命令の申立(法第12条)
    上記に記載した、法第11条規定の管轄裁判所に申立書を提出する。
   ※ 申立書記載事項(法第12条、配偶者暴力に関する保護命令手続規則第1条)
   ① 当事者の特定(規則第1条)にあたって
     当事者の特定のために記載する「住所」とは、当事者の生活の本拠(民法第
22条)を指すものであり、配偶者等からの暴力を一時的に逃れている避難先等
はこれに当たらない。したがって、申立人の住所としては、住民票上の住所を記
載すればよく、避難先等の相手方に知られたくない場所を明らかにすることなく
申立書を作成することができる。
     申立人(及び代理人)としては、迂闊に申立人の避難先等の場所がわかる内容
を申立書に記載しないように細心の注意を払う必要がある。さらに、書証の中に
被害者の避難先等を探索する手掛かりとなる情報が含まれている場合もあること
から、その部分を消して書証を作成するなどの注意も必要である(例えば、避難
先の近くの病院で診察を受けた際の診断書など。)。申立書、書証その他裁判所
に提出する書類は、相手方の目に触れることを前提として注意を払って作成する
必要がある。
     裁判所との連絡については、申立人の現実の避難先を届け出なくとも、代理人
の弁護士事務所や親族、知人の住所等、相手方に知られても不都合のない場所を
送達場所として届け出ることによって、確保することができる。
   ② 申立の理由(法第12条1項、民訴法第133条2項2号、規則第1条3号)
   (ⅰ)配偶者等からの暴力又は生命等に対する脅迫を受けた状況
      日時・場所、暴力等を受けるに至った経緯、受けた暴力等の内容、暴力によ

って受けたケガの内容・程度など写真、診断書などがとれるのであれば、資料として診断書、写真を提出すべきである。

   (ⅱ)さらなる配偶者等からの暴力により生命または身体に重大な危害を受けるおそ

れが大きい事情

      過去の暴力の暴力の頻度・内容・程度など
   (ⅲ)配偶者暴力相談支援センター又は警察に相談した事実等(法第12条1項2号

     a相談し、または援助もしくは保護を求めたことがある場合
      ・相談、または援助もしくは保護を求めた配偶者暴力相談支援センターまた

 は警察職員の所属官署の名称

      ・相談、または援助もしくは保護を求めた日時・場所
      ・相談または求めた援助もしくは保護の内容
      ・相談または申立人の求めに対して取られた措置の内容
      を記載する。
b相談し、または援助もしくは保護を求めた事実がない場合
 宣誓供述書の添付が必要(法第12条2項)である。

宣誓供述書は、公証人役場で作成するものである。印鑑証明書と実印が必要である。作成手数料として1万1000円かかる。供述は、本人が行うことが必要である。配偶者から暴力等を受けた状況、配偶者からの暴力により生命または身体に重大な危害を受けるおそれが大きいと認めるに足りる事情(過去の暴力の頻度、内容、程度など)が、供述すべき内容である。