事務所だより

日本の民事裁判や刑事裁判にもこれくらいの配慮があれば―ドラマから

アメリカのCBSドラマ「グッドワイフ」は、弁護士がみると共感する点が多い。

 

その点で、ああ、こういう判決であれば、納得するだろうな、とか、敵ながらあっぱれと思うところもあるのですが、ある判事が、論理操作にこだわったレジメを作っているのを見て、少し思うところがあった。硬直的な規範を作るよりも、目の前の原告がどのように納得してくれると考えてもらえると良いのだろうか。そのためのバランスや声掛けが大事だと考えてくれるといいのだが。

 

事案はこのようなものである。

原告の銃砲店「グロリアスの銃株式会社」は、被告ダージスが娘を殺害した犯人が使った拳銃はこの銃砲店が販売した、次の犠牲者はあなたの娘かも、との看板を銃砲店の隣に掲げた。このため、原告銃砲店から被告は訴えた。これに対して被告は、第一、言論の自由で守られる、第二、犯罪で使われたうち3000丁がグロリアスの銃で購入され代理購入をわざと見逃している、第三、銃の被害者が賠償を余儀なくされ加害者が利得を得るのは背理である、第四、原告に損害などない、と主張して、看板の撤去は認められないと主張した。

そして被告は原告銃砲店の過失が原告の娘の死亡との因果関係があると主張して反訴を提起しようとするが、米国にはPLCCA(武器合法的取引保護法)により拳銃産業には賠償請求ができず主張自体失当であるとされる。PLCAAは他の法律に違反している場合は賠償ができるところ、イリノイ州の観光増進法に違反し、観光業を衰退させ被告の経営するモーテルに営業を与えていると主張した。

これに対する判決は以下のようなものだった。利益衡量のとりかたがシニカルに描かれている。シーズン7「グロリアスの銃」より。

裁判長「私は、シカゴでの銃による暴力のエスカレートに恐怖を感じるし、PLCAAの免責範囲が広範にすぎるという原告の弁論には賛成できる。私が上院議員だった場合、廃止しようと努力する。しかし、私は裁判官です。理想の法律ではなく、現実の法律に従って判決をする。」

ダイアン「負けだわ」

裁判長「被告兼反訴原告の弁論は賞賛に値するものでしたが、原告兼反訴被告グロリアの銃による銃の販売と、反訴原告兼被告の経営するモーテルへの損害につき直接の因果関係を認定できない。」

ダイアン「裁判長、私たちは即時控訴します。」

裁判長「最後まで聴いてください。原告兼反訴被告に責任は認められず反訴損害賠償請求は棄却します。ダージスさんには同情しますが、法律は法律です。グロリアの銃店に損害を与えていることは明らかです。私は原告のビジネスがダージスさんが設置した看板によって損害を受けたと認めます。ですから原告の看板撤去の請求を認め、反訴原告ダージスさんのモーテルの営業減少の損害賠償請求は棄却します。」

裁判長「よって被告には、看板を降ろすよう命じる。看板を撤去しない場合は、毎日10円の賠償を命じる。」

原告代理人:「は、10円?裁判長、無茶苦茶です。私の依頼者は打撃を受けているんです。」

裁判長「そのとおりだ。だから10円の賠償を認めます。」

被告「裁判長、あの、直ちに支払ってもよろしいですか、いま、4000円あります。」

裁判長「よろしい。では、400日、看板を掲げてよろしい。」

原告代理人「裁判長、無理筋です。」

裁判長「いいや、筋は通っている。あなたの依頼者は非常に儲かる商売をしている。営業損害などちっぽけだ。むしろ、銃の犠牲者から目を背けていることが問題だ。それでは駄目だ。きちんと向かい合わなければ問題がある。判決は、以上です。」