建物明け渡し

設計士が設計の債務不履行による損害賠償を請求された場合

そもそも、設計士事務所は、設計変更は建築主の要望に基づくものであり、あるいは行政指導を織り込んだものであり、追加工事で増えた金額は教室設例では、本工事総額の1割以下であり、通常は予備費を見込んで対応可能なもので、設計業務上の債務不履行の可能性は低いと思われます。

ところで、一般的に、工事全体のコスト・マネジメントは、設計・管理者の責任ではありません。ただし、それを見逃した点をとらえて債務不履行責任がとわれる可能性はあると思うのです。

建築主のコスト・マネジメントまで含めた業務についての要望は、少なくとも監理業務に関わることであり、設計士としては過度な期待を抱かせないよう配慮すべきです。

ここは設計士としては板挟みですが、施工者から設計図書で定められた施工図や設計図が提出されなかった、設計管理者が未承認のまま制作、施工され、それが建築主にとって不都合なものになった場合は見逃した責任が問われる恐れがあります。このような場合、設計士としては法的義務はさておきトラブル防止のために、設計図や製作図の提出を促して、未提出での制作施工が行われた場合は建築主に報告し、厳しい是正の確保、あるいは工事のストップなどの助言を建築主や施工主にして証拠を残しておくことが重要なように思われます。