相続・遺言

相続人による遺産の処分の遺産分割における取扱い

相続人による遺産の処分の遺産分割における取扱い

 

共同相続人の一人が、遺産分割前に、①遺産である不動産を法定相続人分に応じた割合で売却した場合、遺産分割はどう扱われますか。

②また、共同続人が自己の法定相続分を超えて不動産を売却した場合はどうなるのですか。

今回は名古屋で遺産相続案件を多数取り扱っている弁護士が相続法改正の重要ポイントをわかりやすく解説します。

 

1.従前の問題点

遺産分割の相続財産は、相続開始時には、被相続人に属し、かつ、遺産分割時も存在する未分割の財産です。

ゆえに、相続開始後に売却で処分された財産は、遺産分割時には存在しないことになってしまいますので、原則として遺産分割の対象財産にならないことになります。

ただし、遺産分割前に遺産を処分したからといって、その相続人は、最終的な取得額において、他の相続人と取り分が多くなると不公平な結果となります。

 

1-1.遺産が不動産(900万円)で3人のこどもがいる場合

ABCの相続人のうち、Aが不動産のうち共有持分3分の1(300万円)を売却したことを考えてみましょう。

この場合、遺産分割の対象となるのは、原則として、共有持分の3分の2となるものと考えられています。ゆえに、3人で分けると、600万円を200万円ずつ分けることになりそうです。

さて、従前は、「相続人間の合意」があれば、遺産分割前に処分された財産も遺産分割の対象として取り扱ってきました。

2.改正法下の①について

改正相続法により、「相続人の合意」によらなくても、民法906条の2第1項により「遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合であっても、共同相続人は、その全員の同意により、当該処分された財産が遺産の分割時に遺産として存在するものとみなすことができる」と規定されました。

なお、この「全員の同意」は、財産を処分してしまった相続人は含まれません。(2項)

3.改正法下の②について

共同相続人が、自己の法定相続分を超えて財産を処分した場合、法定相続分を超える部分は、相続人が無権限で処分したものであるため、原則として無効となります。

ゆえに、当然に遺産分割の対象となることになります。

ただし、法定相続分を超える場合の処分であっても例外処理のパターンがあります。

例えば、記入期間が被相続人の死亡を知る前に相続人の一人が預貯金を引き出してしまった場合は、これは「債権の準占有者に対する弁済(民法478条)として有効となる可能性があります。その場合であっても、処分した以外の相続人全員の同意により、有効に処分された財産を遺産分割の対象とみなすことができるようになり、相続人間の公平が図ることができることが明確になりました。