相続・遺言

遺産の一部分割と残余の分割~先に預貯金だけ遺産分割をすることはできますか?

遺産の一部分割と残余の分割~先に預貯金だけ遺産分割をすることはできますか?

 

  • 相続人間で、相続財産のうち預貯金の分割方法は決まったものの・・・どの不動産を誰が取得するのか話しがなかなかつかない。
  • 先にいったん、預貯金だけ遺産分割をすることはできるのか。その場合に気を付けることは何ですか。

 

名古屋で遺産相続に関するご相談がありましたら、ぜひ名古屋ヒラソル法律事務所までご相談下さい。

 

1.これまでの問題点と改正法の趣旨

遺産分割は、一般的には、すべての遺産を確定させ、遺産の全部について一度に解決することが望ましいとされています。

しかし、これまでの実務上、審判・調停、協議においても、遺産の一部だけを先行して遺産分割をすることが行われていました。

もっとも、どのような場合に、「一部分割」ができるのか、これまで民法上、明確ではありませんでした。

 

2.一部の遺産分割に関する規律

まず、共同相続人間の遺産分割協議について、改正後の民法は、亡くなった方(被相続人)が遺言で禁止している場合を除き、いつでもその協議で、遺産の一部を分割できる旨が明確になりました。

また、家庭裁判所における遺産分割の審判等についても、共同相続人が遺産の一部の分割を請求することができるものとされました。

ただし、家庭裁判所は、「遺産の一部を分割することにより他の共同相続人の利益を害するおそれがある場合」には、一部の分割をすることができないものとされました。

これは、もともと、遺産分割が、「遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮して」(民法906条)行うことが理由です。

これに資さない場合、つまり最終的に遺産の全部について、共同相続人間で公平な分配を実現できるとの明確な見通しが立たない状況下では、家庭裁判所が一部分割の審判をすることが不適当であると認められるからです。

 

3.預貯金のみの一部分割は可能か?

相続人間で、預貯金の一部を先に分割すべきと合意できれば、預貯金のみの「一部分割」をすることが可能です。

しかし、預貯金を先に一部分割した場合、残りの遺産は不動産のみとなってしまいます。

このように不動産は現物での分割にあまりなじまないものとされており、各共同相続人が取得する複数の不動産の価格差を金銭(預貯金)で調整する余地も残しておいた方が、最終的に、民法上の共有や現物分割などの道をとらざるを得ない場合よりも賢明といえる場合もあります。

 

そのため、預貯金だけの一部分割を先行することで、その後の分割において、各相続人が売却等ではなく、現物での分割を望むものの、複数の不動産の評価額に差があった場合などに不動産の価格差を預貯金等で調整することが困難となる可能性も考えられます。

 そのため、遺産に占める預貯金や不動産の価格・割合や不動産の件数、不動産の一部を売却する見込みがあるかによります。

 例えば、預貯金を一部分割するにあたり、あとの不動産の分割の際の調整用にある程度の預貯金は一部分割の対象から外しておくことなどを共同相続人間で合意しておくことができればそれが望ましいといえるかもしれません。

以上