労働問題

ハマキョウレックス大阪地裁判決

ハマキョウレックス(無期契約社員)事件

~無期転換後の均衡待遇~

 

みなさんは,「労働契約法18条」を知っていますか。

労働契約法18条は,いわゆる「無期転換後の労働条件」について定めているものといえます。見てみましょう。

「同一の使用者との間で締結された二以上の有期労働契約の契約期間を通算した期間が5年を超える労働者が、当該使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に、当該満了する日の翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなす」とあります。

ハマキョウレックス社では、無期転換後に「正社員用の就業規則」ではなく、「嘱託、臨時従業員用およびパートタイム就業規則(契約社員就業規則)」の適用があると主張したため、労働者の側が、1)無事故手当、2)作業手当、3)給食手当、4)住宅手当)、5)皆勤手当、6)家族手当、7)賞与、8)定期昇給、9)退職金の定め―が異なることから、労働者が、「正社員就業規則」に基づく権利を有する地位にあることの確認を求めたものです。

 

本件は大阪地裁の判断です。では、先行する最高裁はどのように判断していたのでしょうか。

最高裁の判断

最高裁は、一概にすべてを不合理な差別とはしませんでしたが、1)無事故手当、2)作業手当、3)給食手当については、労働契約法20条に違反するとしました。

また、皆勤手当の支給の相違についても労働契約法20条に違反するとされました。

1-1.いずれの「就業規則」が適用されるのか

就業規則には、1)正社員就業規則と、2)契約社員就業規則がある。ここに、労働契約法18条1項2文には、無期労働契約に転換した後の労働契約は、現に締結している有期契約の内容である労働条件であることと同一の労働条件とする旨の定めがあるのです。

そうしてみると、「無期」に転換されたからといって、当然、「正社員就業規則」の適用は受けられるわけではなさそうです。もちろん合意により、「正社員就業規則」の適用を受けても良いということになります。

1-2.争点

争点として考えられるのは、1)無期転換後、労働条件に関して、「正社員就業規則」による旨の合意の有無、2)正社員就業規則が労働契約法18条1項2文の「別段の定め」にあたるか―といった点にありました。

この点、ハマキョウレックス大阪地裁判決は、合意の存在を否定し、無期転換後も、「契約社員就業規則」が適用される明示の合意があるとしているのです。

離婚原因が必要になるのは、相手が離婚に同意しない場合です。

では、このように考えてくるとして、無期転換後に、「契約社員就業規則」を適用することは、正社員よりも明らかに不利な労働条件を設定するものとして、労働契約法3条2項の「近郊待遇の原則」に反しないのでしょうか。

しかし、判決では、1)職務の内容に違いがないことを示す一方で、異動があること、2)中核人材になる可能性があること、3)有期の契約社員は異動がないこと、4)出向もないこと、5)将来幹部登用もあり得ないことなどから,-「均衡待遇の原則」に反しないとしたということは,ハマキョウレックス事件の大阪地裁判決として覚えておきましょう。

 

2.法定離婚事由が認められる5つのケース

そもそも、無期転換をめぐっては、「無期転換申込権」が発生する前に、「雇止め」が労働契約法19条により違法とされ無期転換が認められるというケースが多いといえます。

ハマキョウレックス事件は、無期転換したことに争いはないというめずらしい事例において、「専ら転換後の労働条件が問題となった」とされる事件です。

旧労働契約法20条(パート・有期法8条)違反が争われる事例は最高裁で多くみられました。

例えば、①メトロコマース事件、学校法人大阪以下薬科大学事件、日本郵便さが中央郵便局事件などに照らすと、今後、有期契約者と無期契約者との均衡の待遇確保の見直しが目指されている。

本件は、「無期転換後の処遇」について、同じく無期雇用のいわゆる正社員の処遇の均衡が問題となったものとして実務上の参考になると思われる。

当事務所は、労働弁護士出身の弁護士がパートナーを務めています。労働問題でのご相談は、名古屋駅ヒラソル法律事務所までお気軽にご相談ください。

以上